木工屋の話

 木工屋の話

築17年になる家を改装して 
家具類も一新したいという電話があり、相談に乗ることになりました。
聞くと今の家に居ること自体がストレスだというのです。
長年使ってきた家具類も 
どうにも気に入らないと不満ばかりを説明してくれるのですが 
電話では話が見えないので、では一度おおじゃましましょうということになりました。
そんな約束をしたものの 忙しさに流され数ヶ月がたってしまったのですが、
それでも辛抱強く待っていて下さった方なので、
ひたすら頭を下げ下げの訪問となりました。 
私が玄関に入るや否や、待っていましたというばかり、
ここが気に入らない、あそこも変でしょうと 
次から次へと不満場所を並べたてられる勢いは、口をはさむ間もなく、
仕方なく、ひとしきり聞き手になっていると
突然今度は「この家どうしたらいいのでしょうか」と鉾先をむけられてしまった。

ちょっと待ってくださいなとひと呼吸し、
ようやく話の順序の必要を説明して振り出しに戻ることになり、
こちらのペースで話が始まりました。
そばに居るご主人にさりげなく ご希望はありますかと尋ねると
「私には希望なんぞありません、家内の言う通りにしてやって下さい」と、
話をそらされしまった。
この家の住人の力関係は言うまでもなく奥様に主導権があるようです。
その奥様と話をすればする程、気が多過ぎて、
あれもいい、こんな風もいいという気持ちばかりが 先走り、
現状の住まい方について何もでてこない、
それどころか現状を肯定的にとらえることができなくなり、
とにかく一新してみたいとただ焦っているのです。
具体的に希望をお話し下さいと言えば
「なにをどうすればなんて素人には わかりません」と言いながら、
奥の部屋から建築雑誌を沢山抱えてきて 
生活感なくきれいに撮影されてグラビアを指差して
「これもあれもいいのよね」と説明してくれるのです。
結局具体的な話にならず 困り果て退散することにしました。 
その後2回程の話の場を持つことになりましたが、
希望が二転三転とめまぐるしく変わってしまい、とうとう対応し切れず、
暮らしのセミナーを紹介して
自分がどう暮らしたいのかを考えられるような学習をしてもらうことにしました。 木工屋の話2

それから2年が過ぎようとしています。
一度手紙でも書いてみようかと考えています。
色々な 依頼者の多い仕事です。この依頼者を責めるつもりは毛頭ありません。
情報の多すぎる中でその誘惑に振り廻されずに暮らすことの大変さを書いたまでです。

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